研究会について ABOUT

会長あいさつ

「清流の国ぎふづくり」に資する自然共生工法の研究と応用の発展・充実に向けて

岐阜県自然共生工法研究会は、平成13年12月、生物多様性の維持を図る「自然の水辺復活プロジェクト」の開始とともに設立されました。もちろん、「自然共生工法」の対象は水辺にとどまるものではありません。しかし、全ての生きものにとってなくてはならない「水」が自然との共生の原点にあることから、自ずと「自然の水辺」が取り上げられ、その素地として、本会設立の10年以上前から、岐阜県が「多自然型川づくり」を始めとする河川環境の保全再生事業に、民・産・学・官が協働し全国に先駆けて取り組んでいたことがありました。その当時、自然環境の意義、自然の持つ環境機能の重要性について、一般的な関心が高まってきていたとはいえ、公共事業などの建設工事の現場では、経済性や施工性に主眼が置かれ、また、自然との共生を可能とする技術が広く模索されていたとはいえない状況でした。幸い県下には、このまま手を拱いていると、生きものを支えてきた身近な水辺の環境がどんどん貧弱になり、豊かな生態系は消滅してしまうとの危機感を強く抱かれた先人が多くいらっしゃり、本会は、「自然の水辺復活プロジェクト」とともに「自然共生工法の実践的研究」の活動を始めることができました。以来、①自然の環境機能を維持しあるいは増進を図りながら、公共事業本来の目的を果たしうる技術や工法についての知見を迅速に集積し、②それらの技術・工法を担う人材を育成して実際に適用可能としていくことが課題との認識に基づき、少しでも解決に繋がるように努力を続けて今日に至っています。

設立時、「持続可能な発展」という言葉が使われ始めてから10年近く経過していましたが、「自然共生」、「自然との共生」という言葉は現在ほど社会に馴染んではいませんでした。豊かな降水を受け止める広大な森林域を有し、そこから流れ出る水が大小の清流となって、多様な生物を育み豊かな作物をもたらす農地を潤している飛山濃水・山紫水明の岐阜県は、一方において、時間的・空間的に極度に集中する降水がもたらす土砂災害や洪水災害にしばしば見舞われ、また、ときには激甚な地震災害にも遭遇しています。岐阜県自然共生工法研究会は、自然の猛威にも目を背けることなく、多種多様な生物を育む水と緑があふれた自然豊かな県土を保全・復元し、すばらしい県土を次世代に引き継いでいくという目的に沿って、自然共生に資する人材育成や手法・工法の開発や啓発活動など、将来を見据えた活動を継続している団体だとの誇りをもって、法人183団体、個人1,328名の会員(令和元年6月1日現在)の方々とともに、これからも精進を重ね、会の存在とその活動を県内外に広く知って頂けるよう、様々な試みを進めて参ります。

皆様には、今後も、ご意見やご要望を岐阜県自然共生工法研究会にお寄せ頂くとともに、一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

会長 藤田 裕一郎(岐阜大学・名誉教授)